広大な画素ピッチ11.5μm、EOS-1Dの絵はどうだ!

高画素化によって画素ピッチが小さくなった事や弊害の多いNR処理などで、今のデジカメはどんどん色が悪くなっている。そんなカメラにつくづく嫌気が差して、高感度のノイズ耐性にはあまり強くないが、いきいきとした発色のEOS旧デジのD60・1Dsを普段使っているわけだが、以前より気になっていた機種がある。
APS-C、415万画素、基本最低感度がISO/200 ではあるが11.5μm(ギャップがどれ位なのかは判らないが)という現在の水準からすれば広大とも言える画素ピッチのCCDを搭載したEOS-1Dだ。1Dsは8.8μm、D60は7.4μmという画素ピッチなのだが、この両機でも発色を伴うダイナミックレンジの差はやはりある。具体的には色飽和のレベルやグレーレベルでの白トビ・潰れ限界の差である。しかしながら僅かなハイライト・シャドーの差以外は、発色傾向や色分離性(はっきりした色相変化や彩度を伴った色差)自体はあまり差は無い。1DsとD60の画素ピッチ差(これもギャップは判らないので無視)幅で約19%。面積で約30%の差がある。1Dと1Dsは幅で約30%、面積では約70%もの違いがある。
とにかく撮ってみれば判る。じっくりご覧ください。

■ テスト条件
両機とも同じレンズで同じ画角になるように撮影(RAW)。一番下の画像のみ同一焦点距離で撮影し、1Dsの画像をトリミングし画角を揃えている。
両機最低基準感度での撮影だが1DsはISO/100、1DはISO/200なので、1Dのシャッタースピードは2倍速くし露出を統一した。
現像は最も余計な事をしないDPP 1.6、3.xでも結果の差は同じ。
WBはシーン1の複数のポイントで両機が極力同数値になる様にした。このシーンは10月29日の午後3時前で少し色温度が低いため、双方5000K時でグレーをとった後西日の雰囲気を出すために色温度を変更している。
下の2種の画像は、このシーン1で作成したトーンカーブをそのまま適用、色温度・RGB側の彩度、RAW側のコントラストを両方同じ設定で変化させている。

シーン 1

1Ds

1D

1D ピクセル等倍(2,464×1,648 px)

比較画像

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どうも1Dの空色が濃いので実行感度に差があるのでは、と思ったがグレーの濃度を統一しているのでどうやらそうではない。これが画素ピッチの差なのか1Dの色は1Dsに比べ、はっきりくっきりして絵全体としてコントラストが高い。

シーン 2

1Ds

1D

1D ピクセル等倍(2,464×1,648 px)

比較画像

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やはり1Dは各色の差がはっきりしている上、彩度も高い。しかし今の機種の様にただギラギラとしたものではなく、透明感がある。この透き通った感じの秘密は補色がどれだけ残っているか、色飽和しにくいかに係っている。

シーン 3

1Ds

1D

1D ピクセル等倍(2,464×1,648 px)

比較画像

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このシーンでは、わざと葉っぱと色分離しにくい背景を選んでみた。また葉も色が薄く微妙な色変化のものだ。
やはり1Dの方が微妙な色変化をしっかり捕えているのが判る。では1Dsはどうにもならないのかというので、photoshopのトーンカーブ・色相/彩度コマンドを使い手を加えたのが下の画像だ。

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うーん、かなり近くなったが、やはり1Dのリアルさ、存在感には少し届かない。画素面積の70%差は確かにある。
ここで差を詰められた1Dの画像を1Dsと同じ様な手法で触ってみた。下の画像である。

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あらあら、また差をつけられてしまった。この微妙な色差をすんなり表現する1Dの絵は、上でも書いた様に色飽和に強く補色がしっかり残るからである。これが本当にダイナミックレンジの広さである。
この画像のRチャンネルが下の画像。

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ご覧のように1Dの赤い部分は飛ぶこと無く、しっかりシアン成分が残っているのが判る。立体感・存在感のある鮮やかさというのは、補色がどれだけ残っているかが重要だ。
通常DPPやphotoshopのコマンドで彩度を上げるという操作は補色を減らしている操作なのだ。補色が無くなってしまうという事は色飽和を意味し、被写体はギラギラ・のっぺりの描写になってしまう。なのでこの場合補色の残り具合が少ない1Dsの画像は、これ以上彩度を上げても立体感や存在感は改善しない。

では1Dsの描写はこれが限界なのだろうか。方法は一つだけある。単純に露出をアンダーで撮り、主題部分の補色を確保する事だ。そしてトーンカーブ等で整えてやる。こうすれば主題部分はかなり改善する。しかしそうなると当然シャドー側の階調は厳しくなってくる。
この辺り、私の様な色を重要視する者にとっては、少な目の画素数で余裕あるダイナミックレンジの1Dを取るか、撮影とレタッチのテクニックで大伸ばしにも耐える1Dsを取るかの、こういう選択になる。
ま、フォーマットやコマ速などカメラそのものの性格は両機異なる訳だが、415万画素である事を許容できれば、1DはAFや防塵防滴のボディ性能、連写、抜群の発色、と非情に優れたデジタルカメラであるのは間違いない。特に色はかなり感動ものだ。

いやー集光面積が大きいとやはり色は良くなりますねー。ダイナミックレンジも広くなりますねー。とりあえず1Dは1台買うつもりです。画素数が少ないと言ってもレンジが広く色の良い画像は結構大きく使えます。実際5Dより画素数の少ない1Dsは解像感の高さから、5Dより大きく使えます。
画素ピッチの大きさは、やはりレンジの広さ・発色の良さに直結している事が今回のテストで確信できました。
CANON さん、今の技術(ギャップレス・マイクロレンズなど)でこういう色の出るカメラを作ってちょーだい。今の機種はもう色の悪さもばればれ、次なるネタも無いでしょう。方向転換の時期でっせ。

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