EOSデジタル新旧の色再現性に見る、ひとつの結論。
(5D・20D・1Ds・D60、4機種テスト)

まず全ての機種を様々な条件でテストするのはちょっと大変なので、4機種は室内だけにさせていただく。屋外でのテストはEOSデジタル新旧の代表ということで5Dと1Dsで。ちなみに5Dと20D、1DsとD60は、基本的に同じ傾向だ。
テスト条件について。撮影は同一のレンズですべてRAW、露出に関しては各機種ばらつきがあるので、撮影時の絞り値と現像時の微調整で対応。現像はCANON純正のDPP v3.2で同じピクチャースタイルを適用した。ただこおまでの条件だけでは実際に使用するクオリティではないため、DPP上で同じトーンカーブを適用。定量的に評価しにくい偏りのある場合はDPPまたはphotoshop上でトーンカーブを操作し極力同じ条件になるようにした。

画面全体(1Ds)

テストはまずストロボ光源でのブツ撮り、レンズはSigma 50mm DG Macro。20D・D60はAPS-Cで画角が異なるためブツが同じ大きさに写る様撮影距離を変えている。露出は上記した様にばらつきがあるため詳細は以下の通り。

●5D / F14 現像時露出補正なし ●1Ds / F16 現像時露出補正なし
●20D / F16 現像時露出補正+0.17 ●D60 / F16 現像時露出補正+0.17

●作業色空間 / sRGB ●色温度 / 5600k ●ピクチャースタイル / ニュートラル ●コントラスト / 0 ●色あい / 0 ●色の濃さ / +1(5Dのみ全体的に彩度が高く感じたため 0)

ここからさらにグレーカードの各コマの数値がほぼ同一になる様にトーンカーブで調整。kodakのグレーカードは色の偏りがあるため、評価用蛍光灯下でカードを見ながら、極力忠実に再現される様に調整。DPPのトーンカーブで調整しきれない部分はphotoshopで微調整した。
画面の下部分を同じ大きさになるよう切り取ったのが下の画像。

↑画面クリックで拡大画像(左右1500px)

画面左の布はモスグリーンのエプロン、その上に10円玉と5円玉。いかがだろうか。なんと5D・20Dはモスグリーンが茶色になってしまう。おまけに硬貨と同系色になり分離していない。また撮影用を使用しているにも関わらず、5D・20Dはバック紙に紫かぶりが生じる。

実はこの被写体を選んだのには理由があって、以前仕事撮影で、モスグリーンの着物生地の上に古銭を置いたブツ撮りをしたのだが、5Dでは上の画像と全く同じ現象が起き色分離しないのである。ちょうど旧EOSデジに興味を持ち始めていた頃で、先ずはということでD60を購入していて、サブで撮影していたので助かった、という事があって、この現象を解明したいと常々思っていたからだ。
次に下の画像。5Dの画像のトーンカーブを調整しモスグリーンを出してみた。モスグリーンの色そのものが出ない訳ではない。

↑画面クリックで拡大画像(左右1500px)

ご覧のように5Dでもモスグリーンは出る。しかしグレーチャートにご注目、青・緑方向にバランスが崩れてしまうのだ。エプロンと硬貨の色も分離する訳ではない。当然と言えば当然なのだが、赤茶色をグリーン系にするにはGチャンネルの該当領域の数値を上げ(要するにマゼンダをグリーン方向へ)、Rチャンネルの数値を下げてやれば(レッドをシアン方向へ)モスグリーンは出るが、グレーがバランスしている状態から数値を変更する訳だから無彩色の部分は色かぶりが生じる。

モスグリーンと茶色、それに無彩色が混在する状況は、まれなケースかもしれない。一般的な使用に於いて著しい不具合があるのだろうか。別にブツ撮りなんかしないしー、と思われる方もいらっしゃるだろう。モスグリーンが茶色に変わるのは、私も最初は特定の染料の仕業で避けられないのかな、と思ったのだが・・・。
まあ次の画像をご覧ください。

5D

1Ds

お次は紅葉の風景、レンズはSigma 12-24mm、20mm、ISO 50 。詳細は以下の通り。

●5D / F13 1/30sec 現像時露出補正なし
●1Ds / F13 1/40sec 現像時露出補正なし

●DPP作業色空間 / AdobeRGB 現像後photoshopでweb用sRGBに変換 ●色温度 / 5700k ●ピクチャースタイル / スタンダード ●コントラスト / -2 ●色あい / 0 ●色の濃さ / +1 ●同一トーンカーブを適用

まず下の画像。中央少し左、陽の当たった部分。1Dsの画像は比較しやすい様にphotoshopで5Dと同じ4368pxに拡大補完している。

↑画面クリックで拡大画像(ピクセル等倍、左右1500px)

5Dは彩度が高く、赤・黄とも飽和気味。一方 1Dsはおとなしい発色で、明るい部分でもかえで独特のワインレッドがよく出ている。またディティールもしっかり出ている。

次にシャドー部分の画像。

↑画面クリックで拡大画像(ピクセル等倍、左右1500px)

5Dの日影部分は明るいところから一変して彩度が低くなる。またブツ撮りの画像同様、赤系統とグリーン系統の分離がかなり悪くなっている。一方1Dsはシャドー部も色分離が良く日影の赤いもみじがしっかり描写されている。ちなみに5Dの分離の悪さはトーンカーブの操作では改善しない。特定色域の赤の彩度を極端に上げればほんの少し改善するが、明るい部分が既にぎんぎら状態なのでだめ。photoshopで部分的なマスクをつくり赤の彩度を上げるしか方法は無い。しかし1Dsの様にはならない。もともと分離してないので当然だ。

次にもう1枚紅葉の写真。

5D

1Ds

レンズはSigma 50mm DG Macro、ISO 50 。詳細は以下の通り。

●5D / F8 1/100sec 現像時露出補正-0.17
●1Ds / F8 1/100sec 現像時露出補正-0.33

●DPP作業色空間 / AdobeRGB 現像後photoshopでweb用sRGBに変換 ●色温度 / 6000k ●ピクチャースタイル / スタンダード ●コントラスト / -1 ●色あい / 0 ●色の濃さ / +1 ●同一トーンカーブを適用

下の画像。中央下の日影部分。上と同様1Dsの画像は比較しやすい様にphotoshopで5Dと同じ4368pxに拡大補完している。

↑画面クリックで拡大画像(ピクセル等倍、左右1500px)

この画像も5Dは、明るい部分の彩度の高さとは裏腹にシャドー部はガクンと彩度が下がり色分離が悪くなる。

さていかがだろうか。この新旧EOSデジの画質差を大きいと捉えるか小さいと捉えるか、また高感度が良くなっているからまあいいかと諦めるか。被写体やシチュエーション・用途によってはほとんど気にならない事もあるだろう。しかしはっきり後退している低感度時の絵は、私は許容できない。

EOSに限らず今のデジタルカメラは、ほぼ全てが高画素化・高感度ローノイズ化に向かっている。そしてそれは、誰もが低感度時をそのままに高感度域に性能が伸びていると勘違いしてはいないだろうか?私は今のデジは無くしてしまったものが非常に大きいと感じる。それとこのテストで、現時点では、低感度から高感度まで画質のいいオールマイティなカメラは存在しないという事もはっきり分かった。それにも増して悲しいのは、低感度専用の発色の良いカメラが現行モデルとして販売されていないという現実だ。
高感度時の5Dは非常に優れている。使い分けるのがとりあえず今の最前の方法だろう。とりあえず5Dの次期モデルには期待しているが、低感度時の絵がだめなら、1Dsの中古をあと2・3台買っておこうか。いやマジで。

次回は新旧EOSデジの高感度時の比較を予定しています。現在ホールでの講演会など高感度が必要な撮影では、5Dと併用で1Dsも使ってます。もちろんノイズ面の絶対性能は5Dが上ですが、DPPも良くなっているので、そこそこいけるんですよね。

つづく

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